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その後、鞄を持って近づいてきた帝からも“あれって奈留が言ってた流衣って奴?”と聞かれた。
沙和に聞かれた時同様に“そうかもしれない”と曖昧な返事をする。
「もしそうなら、覚えてないのかな」
帝が独り言のように言った言葉に、胸が痛んだ。
それでも2人に余計な心配をかけないように“もう7年もたってるしねぇ”と笑った。
「奈留、帰りに新しく駅前にオープンしたカフェ寄ってこうか?」
それでも心配をかけちゃったみたい。
沙和が笑いかけてくれた。
「うん。あそこ行ってみたかったんだ」
今度の笑顔はしっかり笑えてるかな。
「じゃあ俺は先に帰るな」
“また明日”と手を振って歩きだそうとする帝の肩を沙和はがしっと掴む。
「帝も行くのっ」
「え、でも女の子同士の方がよくない?」
それはカフェに入りづらいと言っているのか、私に気を遣って言っているのか。
賢く優しい帝ならおそらく後者なのだろう。
そう思った私は
「そうだよ!せっかくだから帝も行こっ」
と言う。
「…わかった。俺も行くよ」
私の言葉を聞いて渋々了承した口調だ。
「じゃあ行こっ」
沙和はそう言って帝の腕を引っ張って歩き出す。
「沙和、鞄忘れてるっ」
私は沙和のと自分の鞄を持って2人を追った。
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