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どうして、僕たちは同じ血を分けあって仕舞って居るのだろう。どうして、この広い世界で、誰よりも近い存在なのだろう。どうして、僕たちは愛しさを覚えたのだろう。どうして、僕たちの気持ちは重なって仕舞ったのだろう。
この狭い家の、狭い部屋が、僕たちの楽園だった。誰にも侵され無い、二人で小さな温もりを分け合い、存在を確認する。小さな声で決まった言葉を吐き出せば、罪悪感から僕たちは涙を流し、抱き締めあった。
昔から賢くなる様にと、両親からの教育と期待を押し付けられ育った僕は絵に描いたような、冴えない少年だった。
弟はその正反対。
教育と期待は全て僕に押し付けていたので、弟には、過保護なくらいの愛情。だったのだけど、歪むことなく真っ直ぐに育った弟は、絵に描いた様な愛想の良い少年だった。
僕は元々、そんな弟も両親も大嫌いだった。それ以上に、逆らえない自分が大嫌いだった。
そんな僕を、どろどろとした薄気味悪い感情まで受け入れたのは、その、大嫌いな弟だけ、だった。
きっかけは―――僕の手首についた無数の醜い切り傷をたまたま見られてしまった。たしか、突然の雨に打たれ、びしょ濡れで帰ってきたときだった。着替えている最中に、弟が部屋に辞書を取りに来て……。僕は蔑まされ嘲笑われると思い、すぐにその醜い手首を引っ込め、弟に背を向けた。
だけど、真っ直ぐに育った弟は、心が何よりも綺麗で純粋だった。
「―――ごめん兄さん……!俺、なんて馬鹿な弟なんだろうな。苦痛って思わないわけ、ないよな……。気付けなくてごめん。俺ばっかり楽な思いしてた……。兄さん、兄さんは強くないんだから……一人じゃないんだから……!」
そう、後ろから僕を抱き締める弟の腕は、僕よりも筋肉がついていて、力強く、優しかった。
僕はいつのまにか泣いていて、いつのまにか弟と向き合っていて、胸に顔を埋めていた。弟は何も喋らず、ただ、優しく頭を撫でていてくれた。
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