魅了する。

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ある日突然、体の何処からか芽が生えた。わたしは認めたくないから放っておいた。抜くのもなんだか、気が引けたから。 そしたら段々延びてきて蔓になり、わたしに絡まった。気が付いたら何本も。しかし生活に支障はない。だけど見かねた同居人の王子(そう周りから呼ばれてるけど王子なんかじゃない)は、わたしを連れ病院へと向かった。 白を纏い笑顔を貼り付けた医者は「不治の病」だと言った。病名は覚えてない。知らなくても問題はないのだから。 王子は泣いていたけどわたしは他人事。体に芽が生えたあの日から、少し覚悟はできていたらしい。……というか、生きていたいとも死にたいとも思わない。ねえ、お医者さん。こっちの方が病気だと思いませんか。 処方されたお薬は成長を抑制させるものだった。そういえば、この蔓が花を咲かせたらわたしは死ぬらしい。一体どんな花なんだろうねと王子に話したら、王子は「きっと綺麗だよ」涙を拭いながらそう言った。泣かないでよ王子。本当はわたしが泣いて喚くべきなんだから。 .
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