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わたしは頭の片隅で理解していた。わたしはこれを受け止めていない。だから他人事。悲しくもなんともない。
真夜中。月明かりが眩しくてわたしはカーテンを少し開けてみた。夜を照らす月は美しくて、だけど儚げな光を放ちわたしは無意識に窓を開け身を乗り出し手を伸ばしていた。蔓が絡まるその腕が美しいと云えるのか。月はまるで王子。わたしは水面に映った偽りの月。
頬を伝ったのが涙だと分かったのは、わたしが月には手が届かないと諦めて窓を閉めたときだった。
「寝れないの?」
「届かないの。」
「ほら、こっちへおいで。」
「こんなに近いのに。」
「怖い夢だよ、そんなの。」
「遠かったの。」
王子の暖かさはきっと百万人を笑顔にできる。満たされ過ぎた心は痛いくらいだった。
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