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朝になり王子は居なくなっていた。きっと朝食の準備でもしているんだ。わたしに絡まっている蔓を千切らないようにそっと起き上がり、ぼんやりと蔓を眺めた。
そして見付けた。小さな蕾を。
わたしは死期が近いことを悟った。王子、わたしはどうやら死んでしまうそうです。これを貴方に伝えたら、どんな反応をするのかな。
「王子、どんな花が咲くのかな。」
朝食。腕に見つけた蕾を王子に見せながら呟いた。王子はウインナーを刺したフォークを床に落とし、蕾を見つめ目を大きく見開いた。わたしはそんな姿すら美しいと感心した。
「嗚呼……!もう蕾なんか……。もっと早くにお薬を飲んでいれば……!」
落胆の表情を浮かべながら俯き、黙り込んだ。わたしの質問に答えて、王子。ねえ、もう一度言ってよ。
「……ねえ。どんな花が咲くのかな……。」
王子は何も言わずに部屋へと戻っていった。残されたわたしは独り、パンをかじる。正面には王子は居ない。フォークを落としたままよ、王子。
先程の王子と同じようにウインナーにフォークを刺した。わたしは落とすことなく口へ運び、一口、ウインナーを噛み砕いた。美味しいと感じるはずもなく、フォークに刺したままお皿へ戻し、わたしも部屋へと行った。
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