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息を殺して温もりを分け合うのは、何時しか日課になっていた。
真夜中、午前二時。雪も静まる外の空気は、つん、と冷たく一瞬にして私を体の芯まで冷やした。外灯に照らされた、吐いた息は白く濁っていた。私は決まった道を歩き、とある、小さな公園を目指す。ある人に会うために。
その人は、ベンチにうっすらと積もった雪を払い、座っていた。
「沙蔵。」
声を掛けると、真っ黒な髪の毛を揺らして顔を上げる。そして、少し驚いた顔からの笑顔。鼻先を、頬を赤くして。
「美登里ちゃん……良かった、来てくれないかと思った。」
「そんなわけないでしょう。」
私は沙蔵の隣に座ろうと、雪を払い、腰を下ろした。
見上げた空には久し振りに月が浮かんでいた。
どちらから、というわけでもなく、自然と指を絡め、お互いの存在を確認する。冷えた温もりが擽ったい。
「沙蔵、どんくらい待ったの?」
「んー……分かんない。」
沙蔵は私の肩に頭を預け、目をつぶっていた。整ったその顔に浮かべる表情はどれも美しい。私は空いている方の手で、綺麗な黒髪を掬った。沙蔵は嬉しそうに口角を上げ、そのまま暫く、私は沙蔵の髪の毛で遊んでいた。
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