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「どーやって来たんだよあのオヤジ!」
「彼は恐らく実体じゃない。第4のクエストからブラックホールを抜けてきたんだろうな。何らかの召喚獣と一緒に」
「マジでか! ……あ? 何らかの召喚獣? バハムートじゃねーのか?」
首を捻る紅姫に、蒼湖は、「バハムートかも知れないし、そうではないかも知れない。何らかは何らかだ」と惚けた返事をしてニヤリと笑った。
「モー! <タイラントの細胞>は!?」
「城にあるぞい! プログラムのアイテムは、全部纏めて1つの巾着に入っておる!」
「隠し部屋のカラクリ扉だね!? 僕が取りに行ってくる! メイサ!!」
紫允に応え地面に翼を伸ばした零式の背に、紫允と銀河が駆け上る。
零式は6枚の翼を広げると、北へ向けて飛び立った。
「ブラックホールを抜けてくるなんて……。信じられない、本当に変わったわ……教授」
「ああ、そうだな。見ろよ桃花、蒼湖の顔」
「ふふ、嬉しそうね、蒼湖君」
この10年間、教授はずっと、凝り固まった国の体制と反日が当たり前の世論に抗い、戦い続けていた。
領土問題に顔を突っ込んでは不法に上陸した同国民とバトルを繰り広げて一緒に強制送還され、日本大使館の前でデモを行っている団体とは大喧嘩。
外国に行けば、自国大使館の前で日本人と一緒になって抗議する有り様で、社会的な抹殺は本国に戻って1ヵ月も経たない内に行われた筈だ。
何度となく拘束され、時に刑務所生活。
命を狙われたのも一度や二度ではない。
それでも教授は戦い続けた。
自分達が命を奪ってしまった犠牲者達の供養を続け、ケアをし、鉄道会社への協力を惜しまずに過ごした10年という月日は、出会った時既に壮年後期だった事を思えば決して短くはない。
『胸を張って俺達の前に姿を現せる、貴方のこれからの行いを信じます』
教授は、蒼湖との約束を10年間守り続けてきた。
そしてバハムートと心を通わせ、ブラックホールを抜けてこの地に辿り着いたのだ。
教授は出会いから10年後のこの日――。
一行にとって36人目の、かけがえのない仲間となった。
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