チェリーブロッサム②

8/15
前へ
/915ページ
次へ
「……プログラムに入り、第4のクエストへ行って毎晩ジェミニと空を飛んだ。ブラックホールの近くまで行って、バハムートに語り掛けていたんだ。当然返事は無いが、それでも良かった。貴様にブラックホールへ連れて行かれた時の事も謝りたくてな。ずっと……もう一度会いたいと、願いを口にしていた」 帝王に聞かれた時、ブラックホールの近くでバハムートを見掛けたと答えた零式。 バハムートはきっと、天然の時空の扉であるブラックホールから届く、教授の声を聞いていたのだ。 毎日呼び掛けられる度に空を駆け上がり、教授の声が一番よく聞こえるであろうブラックホールの近くで、耳を澄ませていたに違いない。 9年もの間、ずっとーー。 「感動的だわ」 泣き上戸ではなかった筈だが、アルコールの入った桃花は号泣だ。 目を潤ませていたり、鼻を啜ったりしている者も多い。 紅姫は再び教授の肩を抱き、猪口を持たせると、徳利を傾けた。 「ジェミニなんてイカした名前付けやがって。飲めよ」 ーージェミニ。 それは双子座の事。 教授は2体のバハムートと出会い、その両方と心を通わせたのだ。 「教授。貴方はここに居るバハムートの事も、ジェミニと呼んでいたのではありませんか?」 蒼湖が問えば、教授は照れ臭そうに頭を掻いて頷いた。 「教授、モー。<バハムートの心>を、俺に預けて下さい」
/915ページ

最初のコメントを投稿しよう!

726人が本棚に入れています
本棚に追加