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「……プログラムに入り、第4のクエストへ行って毎晩ジェミニと空を飛んだ。ブラックホールの近くまで行って、バハムートに語り掛けていたんだ。当然返事は無いが、それでも良かった。貴様にブラックホールへ連れて行かれた時の事も謝りたくてな。ずっと……もう一度会いたいと、願いを口にしていた」
帝王に聞かれた時、ブラックホールの近くでバハムートを見掛けたと答えた零式。
バハムートはきっと、天然の時空の扉であるブラックホールから届く、教授の声を聞いていたのだ。
毎日呼び掛けられる度に空を駆け上がり、教授の声が一番よく聞こえるであろうブラックホールの近くで、耳を澄ませていたに違いない。
9年もの間、ずっとーー。
「感動的だわ」
泣き上戸ではなかった筈だが、アルコールの入った桃花は号泣だ。
目を潤ませていたり、鼻を啜ったりしている者も多い。
紅姫は再び教授の肩を抱き、猪口を持たせると、徳利を傾けた。
「ジェミニなんてイカした名前付けやがって。飲めよ」
ーージェミニ。
それは双子座の事。
教授は2体のバハムートと出会い、その両方と心を通わせたのだ。
「教授。貴方はここに居るバハムートの事も、ジェミニと呼んでいたのではありませんか?」
蒼湖が問えば、教授は照れ臭そうに頭を掻いて頷いた。
「教授、モー。<バハムートの心>を、俺に預けて下さい」
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