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「何か酔えない」
「俺もだ」
まさか?
いや、そんな事は無理だ。
でも蒼湖だし?
否定と肯定がエンドレスな頭は、気が張っているせいか全く酔いが回らず、ついついボヤきが出た翠と紫允。
そういう状態なのは2人だけではないらしく、皆がそわそわと北の空に視線を走らせ、折角10年目に咲いた桜を誰も見ていない。
見張りの居ないバーベキューは、肉も野菜も既に炭化してしまっていて丸焦げ。
これは掃除して焼き直しだ。
一行が待ち侘びているのは、蒼湖が起こすであろう奇跡の瞬間。
同じジェミニの名を持つ、2体のバハムート。
願望と、期待が止まらない。
そんな一行の思いを背に、教授と帝王からクリスタルを受け取った蒼湖は――。
「1時間、お預りします」
そう言って零式の背に乗り、城へと飛び立っていった。
そして、そろそろ1時間――。
「帰ってきたわ!」
桃花が空を指差すと、全員が勢いよく仰ぎ見た。
こちらへ向かってくるのは零式と、もう1体。
けれど、バハムートではない。
「うへぇ……。アイツ、マジでやりやがった」
紅姫が呻いたのも無理は無い。
何故なら――。
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