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ジャンケン大会を開催し、グリルと鉄板を負けた者達で掃除して仕切り直した花見。
教授の<数日>を<即日>に訂正したかった紅姫は、何も言わずに<1時間>に訂正されたので機嫌がいい。
しかも、作成でも再生でもなく、融合だ。
大親友としては、是非とも強調しておきたい。
「蒼湖はスゲーだろ? イカした奴だぜアイツは」
「奴が凄いのは10年前から知っているさ。貴様らは、まだ高校生だったのだろう?」
「ああ、そーだぜ」
「あんな研究の対象にするのではなく、何か作らせてみたかったものだな」
「あ? 何かって、何でもいーのか?」
「何でもいいが、今ではなく高校生だった頃に、という話だ」
「蒼湖は作ったぜ? ゲームだけど。アンタも一度は聞いた事あんじゃねーか? <クロスロード>とか、<ゲート>とか」
教授がピクリと反応し、そしてまた、猪口が落ちた。
そのゲームの名を知らぬ者は恐らく居ない。
様々な者と出会い、様々な世界の門を開く、青と赤で1対の、2つのプログラム。
やり込み要素満載のRPGだ。
それ1作のみで専用の機材が必要だったにも拘わらず、一世を風靡した。
その人気は海外にも飛び火し、根強いファンが、今でも世界中に居る。
かくいう教授も、その1人。
ニカッと笑った紅姫だが、教授は溜め息を吐き、俯けた頭をユルユルと振った。
1回目の花見の後、懐かしいゲームを引っ張り出しプレイしていた傍ら、蒼湖はゲームを作ってもいた。
毎日寝不足だった、もう1つの理由がこれ。
そして完成したのが<クロスロード>と<ゲート>。
それは、自分がキャラクターとなりプログラムに入り込めるゲームだった。
紅姫にバラされた蒼湖は、教授に「他にも作れ」と延々言われ続け、苦笑を返すのみ。
そうして過ごした楽しい時間。
空が白み、朝日が昇り始めた頃ーー。
蒼湖と教授は、どちらからともなく来年の花見の約束をした。
5月1日の午前0時。
またここで、と――。
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