雨の日の秘密

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…やだ、私ったらネチネチと。 たぶん滝沢先生は、教頭先生や香山先生のお父さんにお酒を勧められて、断れなかったんだよね。 それで酔っ払ったから、ご機嫌になってるんだ、きっと。 私にはまだ分からないけど、お酒を飲むと気分良くなるって言うもんね。 今日は話を聞くのは無理そうだと思った私は、 「先生酔ってるみたいだから、もう切りますね。ちゃんとお布団で寝て下さいよ。おやすみなさい。」 そう言って、早々に電話を切り上げようとした。 けれども滝沢先生は、しっかり私の話を聞いていないのか、そのまま話し続ける。 「聞いてくれよ、佐伯。」 「…はい。」 「香山先生のお父さん、お酒が強くてさあ…俺にも、どんどん飲ませてきて…ほんと、参った。」 「…大変だったんですね。」 「…おまけにさ、俺、香山先生のお父さんに、気に入られちゃったみたいで…」 「えっ?」 「また来月も飲みに行こう、て誘われちゃったよ。」 「……」 「まあ、たぶん今度は、3人で行くことになると思うけどな。」 「…3人で…」 ……3人、て…香山先生と香山先生のお父さんと滝沢先生の3人で、て事だよね……。 何でそんな、嬉しそうに話すの…先生、ひどい…。 私は悲しくて堪らなくなり、ぶわっと涙が溢れ出してしまう。 そんな事に気づかない滝沢先生は、相変わらず陽気な口調で話を続ける。 *
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