雨の日の秘密

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次の日。 日直だった私は担任の先生に呼ばれて、職員室を訪ねていた。 プリントを配布するように頼まれ、それを両手に抱えてドアに向かうと、 後ろから滝沢先生の長い手が伸びてきて、ドアが開けられる。 「どうぞ。」 「…ありがとうございます。」 教頭先生の目が気になった私は、滝沢先生と目を合わせることなく、お礼だけ言って職員室を出た。 けれども滝沢先生は、そのまま私に続いて廊下に出てきてしまう。 こんなところを教頭先生に見られたりしたら、大変なことに…。 そう思った私は、できるだけ早足で歩いて滝沢先生との距離を取ろうとするが、滝沢先生の長い足は余裕で私の歩くペースに追いついてしまう。 「佐伯」 歩きながら、先生が私に声をかけてくる。 「…はい。」 「逃げるなよ。」 「別に、逃げてません。」 「だったら聞くけど…何でお前最近、俺のこと避けてるの?」 「…いえ、そんなことは…」 「何か、隠してるだろ。」 「別に、何も…」 「じゃあどうして、送ってやるって言っても、断るんだよ。」 「だからそれは…ちゃんと理由も話してるじゃないですか。」 「あのなぁ、あんな下手な嘘、信じる訳ないだろ。」 「…う…」 ――バレてる。 *
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