雨の日の秘密

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「昨日の電話でも、あまり話さないし。」 「それはだって…先生酔っ払ってるみたいだったから…」 「え?俺、酔っ払ってた?」 「はい。え…覚えてないんですか?」 「…確かに、話したのは何となく覚えてるんだけど内容とかは、あんまり…。」 「……」 …だからそういうのを、酔っ払ってるって言うんじゃ…。 「…俺、何か変な事言ってなかったか?」 滝沢先生は、バツが悪そうに私に尋ねる。 「すごく機嫌良さそうに、新撰組の話してましたよ。」 「あー、それ何となく覚えてるわ。 佐伯は、沖田総司が好きなんだっけ?」 「……」 …もうっ、だから私は、何も言ってないってば…。 何で、そこだけ覚えて…。 むうっ、と膨れながら私はため息をつく。 「なあ、」 すると滝沢先生は、階段の踊場で私を抜かすと、私の行く手を邪魔するかのように前に立ち、振り返った。 「何か、怒ってんの?」 「…何でもないです。」 「だったら今日の帰りに、社会科準備室に来いよ。」 「え、でも…」 「いいから。絶対来いよ。」 滝沢先生は私の返事を待たずに、そのまま階段を上がって行ってしまった。 *
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