雨の日の秘密

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そして、放課後になった。 私は、テニス部のマネージャーとブラスバンド部を掛け持ちしている。 今日はブラスバンド部へ行く日なので、先に社会科準備室へ寄ってから音楽室へ行こうかな、と考えながら歩いていると、 教頭先生と香山先生が、こっちに向かって歩いて来るのが見えた。 私にとって、ある意味最強の組み合わせに、背中にひやりと汗が流れ落ちる。 ……ここは、普通に、普通に……。 軽く会釈して通り過ぎようとすると教頭先生が、今までにない親しみのこもった微笑みを投げかけてくる。 ……? 何がなんだか分からないけど、取りあえず私も、に、にこっみたいな、ぎこちない笑顔を返してみた。 すると香山先生も、にっこりと微笑んで私に話しかけてきた。 「あら、佐伯さん。どこに行くの?」 「あ、はい。今日はブラスバンド部へ行く日ですから、音楽室へ行こうと…」 「ああ、あなた掛け持ちしてるんだったわね。」 「はい。」 「私は、てっきり滝沢先生に会いに、社会科準備室に行くのかと思っちゃったわ。」 「っ…いえっ…」 ……香山先生、するどっ……。 ていうか、そんな事聞いたら、教頭先生が…。 私は動揺を隠しきれず、アタフタしてしまう。 香山先生は私の焦りに気づいているはずなのに、知らん顔で隣りに立つ教頭先生に向かって、追い討ちをかけるような言葉を発した。 *
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