雨の日の秘密

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「なっ…」 香山先生は、驚きのあまり凍りついたように固まっている。 …た、滝沢先生…教頭先生に何てことを…。 まさかこれも、開き直り作戦てことなの? 私は、いったい何て言えば…。 「あ、えっと、その、何て言うか…」 肯定すべきか否定すべきかも分からずに、私がおろおろしていると、教頭先生は優しい口調で言った。 「佐伯さん。そんな慌てなくてもいいですよ。香山先生は知ってるみたいだから言いましたが、他の人に話したりしませんから。」 「え、は、はい。」 「でも、そんな隠すような事ではないと思いますよ。」 「…えっ、で、でも…」 「滝沢先生は、もっと堂々と話したいみたいですね。」 「そんな…ムリです。堂々となんて。他の人の目もありますし…」 「恥ずかしいことじゃないでしょ?」 「え…」 「いいと思いますよ。女子高生が好きになっても。」 「え…」 「魅力ありますからね。惹かれるのも、分かります。」 教頭先生は話しながら、うん、うんと頷いている。 何だ…教頭先生って、すごく理解のある人だったんだ…。 緊張の糸が緩みかけた時、香山先生の鋭い視線が私に、きっ、と突き刺さった。 *
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