雨の日の秘密

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「世間体にとらわれずに、堂々としてていいと思います。」 「…はい…」 「女子高生が新撰組を好きでも、恥ずかしがる事はありません。最近は、そういう女性が増えているみたいですよ。」 「えっ?」 「滝沢先生だって、そういうあなただから、お気に入りな訳ですし…」 「……」 「沖田総司。確かに彼は、いい。佐伯さんが憧れるのも、分かります。」 「……ありがとうございます。」 ………教頭先生…話が、見えました。 と、教頭先生が何か言いたそうな、うずうずした様子を見せる。 「…他には、いないんですか?」 「え…」 「…だから、その…新撰組で他に気になる人、とかは…」 「……」 ……これは…教頭先生、あの人の名前を言って欲しいんだよね……。 私は、昨日の滝沢先生との電話の記憶を手繰り寄せる。 「あの…私、あまり詳しくはないんですが…」 「はい。」 「土方歳三も…」 途端に教頭先生の顔が、パアッと明るくなった。 「そうですか。いや、佐伯さんはなかなか、人を見る目がありますね。」 教頭先生は私の言葉を遮って、ちょっと興奮気味に話している。 「彼の事で分からない事があったら、私に何でも聞いて下さいね。」 「…は、はい。」 「それでは私は、これで。部活、頑張って下さい。」 「…ありがとうございます。」 嬉しそうな教頭先生の背中を、私は複雑な気持ちで見送っていた。 *
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