雨の日の秘密

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――コン、コン。 「はい。」 中から滝沢先生の返事が聞こえると同時に、私はガラガラッと勢い良く社会科準備室のドアを開けた。 教師用の回転する椅子に座って、小テストの採点をしていた滝沢先生の肩が、びくっ、とする。 「佐伯か。びっくりした。何慌ててるんだよ。」 「滝沢先生、どういう事ですかっ。」 「何が?」 「教頭先生、すっかり私が新撰組を好きだと思い込んでるじゃないですか。」 「あ、教頭先生と話したんだ。」 「さっき廊下ですれ違って…それで、教頭先生に色々言われました。 女子高生が新撰組を好きでも、恥ずかしがることはないとか、沖田総司がどうとか…」 滝沢先生は、からかうような目で私を見て言った。 「そ。盛り上がった?」 「せんせっ。」 「あー悪い、悪い。そんな怒るなよ。」 「私、わたし…突然、教頭先生に話しかけられて、動揺しちゃって…大変だったんですよ。香山先生も一緒だったから、余計に…」 「別に、そんな動揺するような事じゃないだろ。」 「それだけじゃないです。 教頭先生が……私のこと、滝沢先生から『お気に入りの生徒だ』て聞いてる、て……」 「…あ…うん…」 「どうして、教頭先生にそんなこと言ったんですか。余計に、疑われちゃう…」 私の言葉に滝沢先生がぴくっ、と反応する。 *
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