雨の日の秘密

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「…聞いてもいいですか?」 「うん。」 「あの…どうして教頭先生に、私のこと『お気に入りの生徒』だなんて言ったんですか?」 「…俺は、そういう言葉では言ってないよ。たぶん…教頭先生が香山先生の前で、上手く誤魔化してくれたんじゃないかな。」 「え…誤魔化す、て…」 滝沢先生は、ちょっとバツが悪そうな顔をして言った。 「教頭先生、だいぶ前から気づいてたみたいなんだ。俺が佐伯に、特別な感情を抱いてるんじゃないか、て…」 「え…」 「…悪い。お前と話す時の俺の態度が、違ってたみたいで…」 「え…あ…」 …それ…ちょっと嬉しいかも…。 にやける私を見て、先生は呆れたような顔をして言った。 「…何、嬉しそうな顔してるんだよ。」 「だって…ごめんなさい。続けて下さい。」 「ん。教頭先生は、俺と佐伯のこと、応援してくれてるんだ。 だけど、微妙に誤解してて…、 教頭先生の中では、俺と佐伯は、本当はお互い好きなのに、教師と生徒という立場を気にして自分の気持ちに素直になれずに、誤魔化そうとしてる、らしい。」 「……」 「教頭先生に言われたよ。 『好きなものを、好き、という事は、時にはとても勇気がいる場合がある。けれども、はっきりと好きだと認めてしまえば、人はもっとそれを好きになれる。』」 …それ、新撰組の話の時にも使ってた…。 「好きな気持ちを大切にしろ、だってさ。」 「…でも…何か、香山先生から聞いた話と噛み合わない。 だって香山先生は教頭先生に、 『滝沢先生が、私か奈央のどちらかに、特別な感情を抱いてるかどうか、本当のところ、どう思う?』 て聞かれた、て言ってました。 応援してくれるなら、どうしてそんな探るような事聞くの?」 *
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