雨の日の秘密

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私が疑問を投げかけると、滝沢先生は一瞬迷ってから、声を落として言った。 「……誰にも言うなよ。」 「…はい…」 「教頭先生も、俺達と同じ経験してるんだよ。」 「え…」 「教頭先生も昔、生徒を好きになって内緒で付き合ってたらしい。」 「…っ…うそっ…」 「だから、俺と佐伯の気持ちも理解してくれてる。」 「…そう、だったんですか…」 「教頭先生から見ると、俺と佐伯は分かりやすすぎて、ハラハラするらしいよ。」 「えっ、私、これでも一生懸命、気持ち抑えてるのに…」 「他の人にもバレてないか心配になって、それで香山先生に、かまかけて聞いてみたらしい…」 ……そうだったんだ。 教頭先生ってば、すっごくいい人……。 だけど、どうしよう…。 もしも、また話す機会があって、さっきの本の感想とか聞かれちゃったりしたら…。 教頭先生に今更、私は新撰組に興味がない、なんて言って傷つけたくないし…。 急に黙り込んだ私に、滝沢先生が気づいて声をかける。 「どうした?」 「あの…ずっと言おうと思ってたんですけど…滝沢先生、勘違いしてますよ。」 「え」 「私、新撰組なんて、全く興味ないです。」 「…は?」 「昨日の電話で、突然滝沢先生が新撰組の話してきて…いつの間にか沖田総司を好き、みたいになってますけど、 私、『新撰組の中で、誰が好き』なんて語れる程、詳しくありませんから…」 *
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