雨の日の秘密

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「……冗談だろ?」 「冗談なんかじゃ、ありません。だいたい、日本史の授業で、まだ幕末まで習ってないもん…うっすらとしか、知りません。」 「……」 「だから、もしもまた教頭先生に新撰組の話されたり、本の感想を聞かれたりしても、答えられないです。 どうしよう…この事知ったらきっと、教頭先生傷つきますよね…」 「…何で、もっと早く言わないんだよ…昨日の電話で否定しろよ。」 「だ、だって…」 「教頭先生、お前と新撰組の話するの楽しみにしてたぞ。 女子高生の視点から見て、新撰組はどう映ってるのか興味がある、て…」 「そんな…あっ、そうだ。私、今日から好きになります。新撰組の本とか色々読んで勉強して…」 「――しっ。」 「え?」 (教頭先生、さようなら。) (はい。さようなら。気をつけて帰って下さいね。) 遠くから、教頭先生が生徒と挨拶を交わす声が聞こえてくる。 私は先生に、小声で話しかけた。 (…教頭先生、ここに来るのかな。) (たぶん、な。まあ教頭先生なら、問題ないだろ。) (でもっ、どうしよう。私、今新撰組の話されたら…バレちゃう) (何とか、なるだろ。) 滝沢先生は立ち上がって、ドアに向かって歩いて行った。 社会科準備室の中に机は2つあって、1つは入口の方を、もう1つは壁の方を向いて置かれている。 私は咄嗟に、入口に向かい合うように置かれた方の机の下に潜り込んだ。 …こっちの机の下なら、隠れてるのは入口から見えないはず…。 *
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