雨の日の秘密

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「…あ、そうですか…。それで教頭先生、用事というのは…」 滝沢先生が、さり気なく話を急かした。 「はい。昨日の話をしたかったんですが、職員室だと香山先生や他の先生がいるので話せなかったんで。 なかなか、盛り上がりましたね。」 「そうですね。お2人とも新撰組についてとても詳しくていらっしゃって…色々面白い話が聞けて、楽しかったです。」 「いやいや、滝沢先生も世界史専門なのに、なかなか深いところまで理解していらっしゃる。」 「いえ、私はそれほど新撰組について詳しい訳ではありません。日本史は幕末の辺りが好きなので、新撰組についても少し知っているくらいで…。」 「それがいいんですよ。滝沢先生の視点は、第三者的でとても公平だ。 私達はどうも、新撰組中心に考えてしまいがちで…」 そこまで言って、教頭先生はハッとしたように、話を止めた。 「すみません。新撰組の話になると、つい熱が入ってしまって…」 「いえ…」 「実は…香山先生の父親が、すっかり滝沢先生のことを気にいってしまったようでして…」 「ああ、なぜかそうみたいですね。来月もまた、教頭先生と飲むから来ないか、て誘われました。」 「彼が滝沢先生を気に入ったのは、新撰組の話ができる仲間としてだけではないですよ。」 「え…」 (……) 教頭先生の含みのある言い方に、私の胸がザワつく。 *
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