雨の日の秘密

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教頭先生が出て行くと、ドアに鍵がかけられる。 滝沢先生は私が隠れている机の正面に立つと、片手を机について、少し屈んで机の下を覗き込むようにして言った。 「もう、出てきてもいいよ。」 先生の言葉を聞いて私は、キャスター付きの椅子を向こうに押しやった。 「……」 「……」 再び、先生と私の視線が絡み合う。 取りあえず机の下から出ようとした私は、ハイハイするように四つん這いになって、片手を一歩前に踏み出そうとした。 けれどもそれより早く滝沢先生が、はあ、とため息を吐くと、片膝を立てて両腕で抱えるようにして、その場に座り込んでしまう。 ……あ…出れない……。 先生に出口を塞がれてしまい、仕方なく私は机の下に潜り込んだまま、ハイハイの姿勢からお尻をペタンとつけて座った。 「お前なあ…何で、隠れるんだよ。」 「だって…つい…」 「急にいなくなるし、こんな所に隠れてるし…おかげでヒヤヒヤしたっつーの。」 「う…ごめんなさい。」 「だけど…香山先生のお父さんの話には、驚いたな。」 「…はい。」 「昨日飲んでる時は、全くそんな話してなかったから、さすがにびっくりした。 教頭先生に色々気を使わせて、何か申し訳ないな。」 「…はい。あの…先生…」 私は、もじもじしながら、話を切り出した。 *
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