雨の日の秘密

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からかうような瞳で、先生は私の顔を覗き込んでくる。 「だけど凄いな、佐伯は。土方歳三の次、なんて。」 「もうっ、そんな言い方じゃなくて…でも…」 私は、もやもやと心に引っ掛かっていた思いを、口にした。 「…ね、先生…」 「ん。」 「…あんな風に、今すぐ答えちゃってよかったの? 私は、すごく嬉しかったけど……先生の将来を左右するような事、なのに…」 「……」 不安そうに確かめる私を、先生は自分の胸に引き寄せた。 私の顔を胸に押し当てながら、先生が少し掠れた声で甘く囁く。 「…さっき教頭先生に、5年後10年後の将来を考えて…みたいな事、言われただろ?」 「…はい…」 「正直、先の事なんて想像しても、いまいちピンと来ないけど…」 先生は、更に強く私を胸に押し付けると、ちょっと照れたような声で続きの言葉を口にする。 「…お前と一緒にいる、ていうことは、簡単に想像できるんだ…」 「…先生…」 「俺、お前にしか興味ないから…」 「…っ…」 「だから…余計なこと考える必要、ないからな。」 「…せんせ…」 私は、先生の背中にしがみつくように手を回して、先生の胸に顔をぴったりと、くっつけた。 *
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