雨の日の秘密

67/88
前へ
/388ページ
次へ
先生は、はっきり言わなくても、ちゃんと私の不安な気持ちを読み取って、私の心から不安を取り除いてくれた。 そのことが嬉しいのと同時に、私の心の中は、先生への愛おしさでいっぱいになってくる。 「…せんせ…」 私は、先生のシャツに頬をすり寄せながら、小さく呟いた。 「先生…キス、して…」 「……」 「…お願い…」 「……」 私を引き寄せる腕の力が緩み、先生の顔がゆっくりと近づいてきた。 願いが聞き入れられたのだと思い、その唇が触れる瞬間を心待ちにしていると、 私の唇の前を、先生は素通りしてしまう。 「…せんせ…どうして…」 お預けされて、ほんの少し涙目になって訴える私の耳元で、先生はイジワルに囁いた。 「して欲しい?」 「…はい…」 「…だったら、俺の目を見ながら言って。」 「えっ…そんな…」 「ほら…」 先生は、両手で私の顔を包み込むようにして前を向かせると、イジワルな瞳で見つめながら催促してくる。 「ほら、早く…ちゃんと言えたら、してやるから…」 「……」 羞恥で真っ赤になりながらも、欲望に負けて私は、消え入りそうな声で小さく呟く。 「…キス、して…先生…」 *
/388ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5283人が本棚に入れています
本棚に追加