5283人が本棚に入れています
本棚に追加
滝沢先生は手を伸ばして本を拾うと、私の前に突き出して言った。
「さっきの続きは、当分お預けだな。
佐伯は、新撰組の勉強に集中しないと。」
「…う…はい。」
「今度また部活の帰りに雨が降ったら、送ってやる。それで車の中で、新撰組についての問題を出してやるよ。」
「えっ、そんな…」
「確か週間天気予報で、あさっては雨になってたから。
基礎的な問題くらい、分かるようにしておけよ。」
「や…無理です。そんな短期間で…」
「当分、雨の日は、新撰組の勉強会だな。」
「……」
「お前だけに特別指導する訳だし…雨の日のことは2人だけの秘密、な?」
「……」
…そんな秘密、欲しくない…。
*************
それから、数日が経った。
香山先生のお父さんはまだ、滝沢先生のことを諦めてないらしい。
教頭先生を通じて、
「気が変わったら、いつでも言ってくれ。」
と言われてる、とか。
でも、香山先生の教育実習の期間が終わったことで、私はちょっぴり、ほっとしている。
*
最初のコメントを投稿しよう!