雨の日の秘密

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滝沢先生は手を伸ばして本を拾うと、私の前に突き出して言った。 「さっきの続きは、当分お預けだな。 佐伯は、新撰組の勉強に集中しないと。」 「…う…はい。」 「今度また部活の帰りに雨が降ったら、送ってやる。それで車の中で、新撰組についての問題を出してやるよ。」 「えっ、そんな…」 「確か週間天気予報で、あさっては雨になってたから。 基礎的な問題くらい、分かるようにしておけよ。」 「や…無理です。そんな短期間で…」 「当分、雨の日は、新撰組の勉強会だな。」 「……」 「お前だけに特別指導する訳だし…雨の日のことは2人だけの秘密、な?」 「……」 …そんな秘密、欲しくない…。 ************* それから、数日が経った。 香山先生のお父さんはまだ、滝沢先生のことを諦めてないらしい。 教頭先生を通じて、 「気が変わったら、いつでも言ってくれ。」 と言われてる、とか。 でも、香山先生の教育実習の期間が終わったことで、私はちょっぴり、ほっとしている。 *
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