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あれから何度か雨が降り、私は秘密の個人指導(?)のおかげもあって、新撰組についての基礎的な知識が増えていった。
「じゃ、次の問題な。」
先生はハンドルを握りながら、チラリとこちらを見ると、すぐに視線を前に戻して問題を出してきた。
「1864年7月、ある旅館に集まっていた尊皇攘夷派の志士を、新撰組が襲撃しました。この事件は…」
「はいっ。分かりました。『池田屋事件』」
「ブーッ、不正解。」
「えっ、どうして…」
「最後まで、問題聞けよ。…この事件は『池田屋事件』ですが、では襲撃された志士の主な藩の名前を2つ答えなさい。」
「なっ…ずるい…そんな引っ掛け問題…」
「正解は、『長州藩』『土佐藩』でした。最後まで問題聞けば答えられたのに、惜しかったな。」
「……」
……先生の、イジワル……。
プイ、と横を向いて拗ねる私に、滝沢先生はクックッと笑って言った。
「そんなに、拗ねるなよ。」
「…だって、せっかく全問正解だったのに…」
今日、滝沢先生が出す問題に全部答えられたら、ご褒美として、久し振りにDVDを一緒に見る約束になっていた。
「…分かった、いいよ。最後まで問題聞いてたら、答えられたんだろ?お前、頑張って勉強してたし、特別に全問正解ってことにしてやるよ。」
「ほんとに?」
「お前が観たいDVD、何でもリクエストしろよ。今度レンタルしておくから…」
「今日が、いいです。」
「え…でも今から借りに行ってると、遅くなるし…」
「この前、先生の車で途中まで観た、あのDVDでいいから。今日、先生と一緒に観たい。」
「…いや、あれはダメ。」
「どうしてですか?」
「今、車にないんだ。この前、後部座席の荷物を整理して…今、俺の家に置いてあるから。」
「……」
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