雨の日の秘密

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そわそわして、画面をまともに見れないでいると、先生が私の顔を覗き込んでからかうように言う。 「どうした?顔、真っ赤だよ。」 「だって…」 「お前も、キスしたくなっちゃった?」 「ち、違っ…」 玄関のチャイムが鳴って、画面の中の2人がキスを止めた。 男性が宅配便のドライバーから荷物を受け取って戻ってくると、ソファーに座って箱を開けようとする。 すると、いつの間にか入り込んできた、宅配便のドライバーを装った敵が、2人に銃を向ける。 じりじりと、テラスのバルコニーまで追い詰められる2人。 予想外の展開に、画面から目が離せない。 自分の家でDVDを観る時、よくクッションを抱き締めながら観ている私は、 ついいつもの癖で、クッションの代わりに後ろから回された先生の腕を、ぎゅうっと抱きかかえるようにして、画面を見つめていた。 『俺を、信じろ。』 男性はそう言うと、主人公の女性と手を繋いで、海に飛び込んだ。 1作目はそこで終わり、画面にはエンドロールが流れる。 「面白かったです。最後、このまま終わるかと思ったのに、驚きました。」 「…ん。そうだな。」 「先生、2作目のストーリーを知ってるんですか?」 「いや、予告でチラッと観ただけ。」 「確か、秋に公開でしたよね。観に行きたいなあ。ね、先生。」 「…そうだね。」 *
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