雨の日の秘密

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ちょっと興奮気味に話す私と違い、先生はぎこちなく返事を返すだけ。 様子のおかしい先生に気づいた私は、先生の腕を抱き締めたまま後ろを振り返った。 「どうしたの、先生?」 「……」 「何か、変ですよ。」 「……」 全く状況が分かっていない私に、先生は言いにくそうに口を開く。 「…さっきから、さ…」 「はい。」 「胸が手に当たってるんだけど。」 「え…あっ!」 私は、ぱぱっ、と抱き締めていた先生の腕から手を離した。 …やだ、私、いつもの癖で…。 ……冷静に振り返ってみると、 胸に手が当たってたというよりも、私が先生の手を胸に押し付けてたみたいだったよね……。 「ご、ごめんなさいっ。」 「……」 「私…つい、いつもの癖で…」 「いつもの?」 「あの…家で映画とか観る時いつも、クッションをぎゅうっ、てしてるから…」 「…そう。クッションと、間違えたんだ。」 「いえ、あの…」 先生の瞳が、イジワルに輝く。 「だったらこのまま、クッションが当たってると思っててもらおうかな。」 「え…」 先生は、後ろから回した腕の位置を少しずらすと、手のひらで私の胸をスルリと撫でた。 *
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