雨の日の秘密

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苦しげに零された、先生の、先生ではない1人の男としての言葉に、ドキリとする。 「…先生…」 ゆっくりと目線を後ろに向けると、必死で何かを抑えようとしている、余裕のない表情の先生がそこにいた。 きゅっ、と胸の奥が甘く疼いて、先生への愛おしさが込み上げてくる。 先生は今、私を、生徒としてではなく1人の女として見てくれているのだ。 そして先生も、先生としてではない、1人の男として私の前にいる。 だから、あんな余裕のない表情を、私に見せてくれるのだ。 …私だけ、に…。 その事が嬉しくて、私の気持ちはどんどん高ぶっていく。 ――そして、 もっと、もっと先生を近くに感じたくなる。 ――私の前で、 先生ではない、いつもと違う先生をもっと、見せて欲しい…。 「…先生…」 私は先生の腕の中で体の向きを変えると、ぎゅっ、と抱きついて、真っ赤になった顔を先生の胸にこすりつけた。 先生の胸に顔を押し付けたまま、羞恥でいっぱいになりながら、消え入りそうな声で小さく囁く。 「……先生…続き、して……」 *
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