雨の日の秘密

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「せん…せ…」 呼吸が整わないまま、私は先生の胸に顔を押し付けられながら、目線を少し上に向けた。 先生の男らしい喉元が、息を荒げる先生の動きに合わせて、軽く上下しているのが見える。 そっと手を伸ばして、指先で先生の首筋に触れると、先生は体をビクッとさせる。 先生は、首筋に触れている私の手を握ってそこから離すと、そのまま肩を軽く押しやって体ごと離した。 「…や…先生…」 まだ体に甘い感覚が残っている私は、先生の温もりを欲して、自分から先生の胸に飛び込んで頬をすり寄せる。 「…ごめん、佐伯…」 困った様に、ちょっと顔を歪めながら、先生は私を自分から引き剥がして言った。 「悪いけど…そういう事するの、今は止めて…」 「…え…」 「…色々落ち着くまで…」 「…あ…」 先生の事情を理解した私は、ぼっ、と火がついたように赤くなりながら、ソファーにきちんと座り直して、正面を向いたまま先生と会話を交わす。 「ご、ごめんなさい…」 「いや…お前が謝ることじゃないし…」 「……」 「……」 少しの沈黙の後、先生はソファーに座る私の正面に片膝をついて座った。 名残惜しそうにキスマークに触れてから、ブラウスのボタンをはめてくれる。 2つともボタンをとめ終わると、先生は短く息を吐いて心の内を零した。 「…俺さ…さっき、ほんと危なかった。」 「…え…」 「あのまま、抱いてしまいそうだった。お前のこと。」 「…先生…」 *
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