雨の日の秘密

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画面の中で玄関のチャイムが鳴り、やっと2人の濃厚なキスシーンが終わる。 …よかった…これで落ち着いて観られる…。 私は、ホッと安心したように息をついて、テレビの画面を見つめた。 ……確かこの後は…宅配便のドライバーに扮した敵が、いつの間にか家の中に侵入してきて……。 この後の展開を知りながらも、ドキドキしながら画面に見入っていると、 ――ピンポーン。 先生の家の玄関のチャイムが、鳴った。 映画と同じシチュエーションに、先生と顔を見合わせてクスッと笑う。 「一時停止するよ。ちょっと待ってて。」 先生は、DVDを止めるとインターホンで相手に話しかけた。 「はい。」 「あ、宅配便です。荷物をお届けにあがりました。」 …わ…宅配便、てところまで同じ…。 インターホンから漏れてきた女性ドライバーの声を聞いて、私に緊張が走る。 …今、観てたのは映画だし、フィクションだし、先生と私にそんな事起こるはずないって、分かってるけど…、 タイミングといい、ここまで偶然が重なると、ちょっとだけ怖くなってきちゃう…。 先生は、そんな私をからかうように言う。 「何で、そんなにビクビクしてるの?」 「だって…あまりにも映画と同じで…」 「宅配便のフリまでしてここに来る人なんか、俺とお前の知り合いにいないだろ?」 「それは、そうですけど…」 「来たら怖いな、ていう相手でもいる訳?」 「……」 *
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