雨の日の秘密

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一瞬で、迷うことなくある人の顔が浮かんでしまい、私は慌てて頭の中の映像を振り払った。 ………ごめんなさい、香山先生。 宅配便の荷物を受け取って戻ってきた先生は、私の頭の中を見透かすように、からかってきた。 「よかったな、佐伯。」 「え」 「香山先生じゃなくて、本物の宅配便のドライバーの人だったぞ。」 「……」 ……私、何も言ってないのに……。 「…これ、お前が喜ぶ物だよ。開けてみろよ。」 先生は送り状を剥がして、私に包みを差し出す。 「私が開けちゃって、いいんですか?」 「ん。」 不思議に思いながらも言われた通りに、包装を丁寧にといていく。 「え…これ、もしかして…わあ、すごーい。」 私が興奮気味に、届いた物を先生に見せると、先生は満足そうに、そしてちょっと得意気に言った。 「ほら、だから俺が言っただろ。 当たるなら、C賞だって…」 宅配便で届いたのは、雨の日に、先生と2人で缶コーヒーを飲んで応募シールを集めていたキャンペーンの、 C賞の、ペアエプロンだった。 END
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