体育祭

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しばらくパソコンとにらめっこしながら作業をしていた俺は、両手をあげて大きく伸びをした。 体重が後ろにかかり、椅子の背もたれがギイッと音を立てる。 そのまま椅子を半分回転させて外に視線を向けると、体育の授業でリレーの練習をしている生徒達が目に入ってきた。 体育の授業は、たいてい2クラス合同で行われている。 1クラス2チーム、計4チームに分かれて男女混合リレーを行っていて、 生徒達は、チームごとに男女交互に並んで立って、自分の順番を待っている。 次の走者が並んでいる場所に目をやると、その中に佐伯の姿があるのに気づいた。 お、と思い、俺は椅子から立ち上がって、職員室の窓際に立った。 髪を片側で1つに結んでいるせいか、佐伯はいつもと少し雰囲気が違って見える。 ……緊張してるな、あいつ……。 目一杯、手を伸ばしながら、顔を後ろに向ける佐伯の表情は少し固い。 自分のチームの走者から1位でバトンを受け取ると、佐伯は、きゅっと口を結んで懸命に走り出した。 2位のチームの女子は陸上部の生徒で、1位の佐伯との距離をどんどん詰めてくる。 コーナーに差しかかった時、佐伯がつまずいて転びそうになった。 …うわっ、危なっ…。 思わず声が出そうになったのを何とか抑え、俺は職員室の窓枠に手をかけて、リレーの行方を見守った。
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