5283人が本棚に入れています
本棚に追加
はあ、と大げさにため息をついて、俺は隣りに立つ米倉をジロリと見た。
「…あのさ、米倉先生。俺、先生の妄想とか興味ないんですけど…」
「まあ、そう言うなって。これで最後だから。
次は、滝沢先生もよく知ってる、テニス部のアイドル、佐伯。」
「…え…」
いきなり佐伯の名前を出されて、内心ドキリとしながらも、俺は何とか平静を装ってみせる。
「…ああ。佐伯、ね。」
「そう。可愛いよな、あいつ。」
米倉は、立ち上がって自分のチームを応援する佐伯を見つけると、目を細めて呟いた。
「……」
「……」
そのまま2人で黙って佐伯の様子を眺めていると、同じチームの男子生徒が、ちょんと佐伯の肩をつついて、何か話しかけた。
周りの声援でかき消されてしまったらしく、え?というように、佐伯が小首を傾げる。
「かっわいー。」
隣りでデレた顔をする米倉に軽くイラつきながら、俺は表情を変えずに米倉に尋ねた。
「…それで?」
「え…それで、て?」
「他の2人には、色々言ってただろ。
理想の妹だとか、あんな先輩が欲しかったとか…」
「…ああ、」
「佐伯には、そういうの無いの?ただ、可愛いって思うだけ?」
「んーそうだな…」
米倉は少し考える素振りを見せると、思いついたように、手をポンと叩いた。
最初のコメントを投稿しよう!