体育祭

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「初恋の彼女、かな。」 「初恋の彼女?」 「ん。初恋って、人によって年も違うけどさ…男にとって初恋の相手って、何か特別な存在だろ。 こう…初々しくて神聖な感じで…いつまでも汚れて欲しくない、ていうか…」 「まあ、ね。」 「佐伯って、そんな感じしない? 可愛くて純粋そうで、見てるだけでドキドキしてくるような…」 「…あー…」 「だろ?」 「…ん…」 ………確かに。 米倉の表現が、あまりにも佐伯のイメージにぴったりで、つい俺は頷いてしまった。 「あーあ。高校生の頃に、佐伯みたいな子に告白されてみたかったな。」 「は?」 「誰もいない教室に呼び出されて、『ごめんね、急に呼び出したりして。』とか、赤い顔して言われちゃったりして…」 「……」 「モジモジしながら、『私…前から米倉くんのことが…』とか、目を潤ませて言われたらさ、断る男なんていないよな。」 「……」 「メチャメチャ可愛いんだろうな、きっと。」 「……」 ………可愛かったよ。メチャメチャ。 以前、佐伯に好きだと言われた時のことを思い出して、俺は必死で顔がにやけるのを抑え、 誤魔化すように、コホンと咳払いをした。
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