体育祭

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委員会が始まってからも、俺は佐伯の言った「秘密」について考えていた。 ざっと見渡したところ、この委員会に出席しているメンバーの中には、佐伯が親しくしてる女子はいないようだ。 ……となると、友達と約束して実行委員になったわけじゃなさそうだし、 実行委員をやることによって、何かメリットがあるとも思えないし……。 俺はさり気なく、黒板に書かれた決定事項をメモする佐伯に目をやった。 伏し目がちになっていた佐伯の視線が、黒板の方に向けられた時、クルンとした長い睫毛に隠れていた瞳が姿を見せる。 その無垢な瞳には、大した秘密なんて、しまっておけそうにない。 ……「秘密」なんて言ってたけど、きっと秘密にするほどのことじゃない、可愛らしいことなんだろうな……。 て、分かってるんだけど……。 ―――気になる。どうしても。 今まで佐伯の顔を見れば、だいたい何考えてるかくらい分かったのに、今回ばかりは、全く見当がつかない。 実行委員会の話し合いが終わっても、まだモヤモヤした気持ちを抱えたまま、俺は職員室へ戻ってきた。 「お疲れ様。」 自分のデスクで仕事をしていた米倉が俺に声をかけると、あれ?という顔をして近寄ってきた。
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