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「あれ?実行委員会で、何か揉めた?」
「いや、特には。」
「その割に、何だか難しい顔してるけど。」
「…別に…思ったより長びいて、疲れただけ…」
俺は大げさに、伸びをしてみせた。
* * *
仕事終わりにメシに行こうと誘われ、米倉が連れて来たのは、小洒落た雰囲気の居酒屋だった。
『和モダン』といった雰囲気の店内は、照明の明るさも落としてあって、大人の雰囲気が漂っている。
「いい店だろ。」
米倉が得意げに、話しかけてくる。
「店の雰囲気だけじゃなくて、味もいいんだぜ。ここ。」
「だな。この唐揚げも旨い。」
そう言って俺は、店こだわりの岩塩をつけた唐揚げを、口に放り込んだ。
「そうだろー。ここは、俺、結構使ってるんだ。女の子のウケもいいし。」
「……」
「女の子からすると、こういう店を知ってるだけで、大人の男に感じるらしいよ。」
「ふーん。」
「ふーん、て…そんな興味なさそうな言い方してるけど、お前だって結構、隠れ家的な店、知ってんじゃん。」
「まあ、少しはね。」
「やっぱ、そういう店に連れてくと、彼女が喜ぶんだろ?」
「…いや、」
――未成年の佐伯を、こんな店に連れてくるわけないだろ。
心の中で1人ツッコミをいれて、俺はビールをゴクリと飲んだ。
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