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「…こういう店には、連れて来たことない…」
「あ、彼女、あんま飲めないんだっけ?」
「…ん…」
軽くアルコールが回って、ほろ酔い気分の俺は、相槌を打ちながらぼんやりと考えてみる。
佐伯は……あんま、酒、強そうじゃないよな。
カクテル1杯とかで、酔っ払うんだろうな、きっと。
……顔がほんのり赤くなって、目をトロンとさせちゃってさ。
俺は、酔っ払って首まで赤くなった佐伯を想像しかけて、ハッとする。
……うわっ…やばっ、俺。
今ちょっと、変態くさかった。絶対。
……米倉の妄想癖が、移ったかも。気をつけよ……。
俺は妄想を振り払うように、更にビールをゴクゴクと流し込んだ。
「…そう言えばさ、お前知ってる?」
思い出したように、米倉が話題を変えてきた。
「うちの学校、体育祭の後に急にカップルの数が増えるんだよ。」
「へえ…そうだっけ…」
「男女混合の競技が多いからさ、そういうのをきっかけに、盛り上がっちゃうらしいよ。」
「ふーん。いいんじゃない、“青春“て感じで。」
「で、最もカップルになる確率が高いのが…体育祭の実行委員。」
「…えっ?」
米倉の言葉に、思わず反応して声をあげてしまう。
「去年なんて、実行委員の中から、5組の新しいカップルが誕生したんだぜ。」
「あー…お前、去年やったんだっけ…」
「ん。もう、準備の段階から誰が誰を狙ってるのか、すぐ分かるよ。
必要以上に集まって打ち合わせしたり、やたらに朝早く出てきて、2人きりになろうとしたり…」
「……」
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