体育祭

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更に一歩近づいて距離を詰めると、佐伯がピクッと身構えたのが分かった。 「…佐伯…」 俺は手を伸ばして佐伯の髪を指ですくい上げると、そっと耳にかけた。 羞恥を煽るように、わざと耳元で囁く。 「…佐伯も結構、大胆なこと言うんだな。」 「…っ…」 佐伯は、真っ赤になった顔を隠すように俯こうとする。 俺は、すかさず佐伯の頬に手を添えると、クイ、と上を向かせた。 「…先生…」 ちょっと恥じらいながらも、佐伯は俺と瞳を合わせてきた。 熱っぽく俺を見上げるその瞳は、何かを期待している。 それが何か分かっているのに、俺はイジワルに佐伯に問いかけた。 「何?」 「……」 「さっきも言っただろ。はっきり言ってくれないと、分からない。」 「…っ…」 佐伯の口から言わせたくて、わざと気づかないフリをする俺のイジワルに、佐伯の瞳がじわっと潤んでくる。
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