体育祭

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キスをねだられる事を期待していた俺は、軽く脱力してしまった。 「…先生…」 佐伯は、おあずけされた子犬のように、無垢な瞳で見上げてくる。 はっ、と我に返った俺は、佐伯の背中に手を回して軽く引き寄せた。 腕の中で佐伯は、もぞもぞと動いて、潜り込むように俺の胸に頬を寄せてくる。 じわりと愛おしさが込み上げてきて、俺は佐伯の後ろ髪を優しく撫でた。 ――うん。これは、これでいいんだけどね。 ちょっと下心があった俺としては、何て言うか……不完全燃焼……テキな? 遠慮がちに俺の背中に手を回した佐伯が、細い指で俺の服をきゅっ、と掴んだ。 俺の胸に頬をすり寄せながら、佐伯が甘えるように呟く。 「……好き……」 「……」 「……滝沢先生…大好き……」 一度は抑え込んだものの、まだ完全に消えずに俺の中でくすぶっていた欲望の炎は、 佐伯の無自覚に落とされた言葉によって、ぶわっとその勢いを増してしまった。 「……佐伯……」 ……余裕ぶって、焦らしたつもりでいたけれど、 焦らされてるのは、結局、俺の方だな……。 そんな悔しい気持ちも手伝って、俺はちょっと強引に佐伯に上を向かせると、噛みつくようなキスを落とした。
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