体育祭

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* * * 放課後。 ノートパソコンを抱えて職員室を出ると、俺は社会科準備室に向かった。 このところ、体育祭実行委員会の集まりや準備に時間を取られて、仕事が溜まってしまっている。 今日は珍しく予定が入っていないので、この機会にまとめて片付けてしまいたい。 頭の中で、今からやる作業の段取りを組み立てながら、階段を上がって社会科準備室の前まで来ると、ガチャリとカギを開ける。 ドアを開けて中に入ろうとした時、 「滝沢先生」 3年生の女子生徒3人が、俺を呼び止めた。 走ってきたらしく、少し息を切らしている。 「大丈夫?息切れしてるみたいだけど。」 「先生のこと…走って追いかけてきたから…」 「歩くの速いんだもん。」 「ねー。」 「廊下や階段を走ったらダメだろ。すべったり、階段を踏み外して落ちたりしたら…」 「あー、先生それ、受験生のうちらに言う?」 「ひどーい。」 きゃぴ、きゃぴと楽しそうにはしゃぐ彼女達は、特に俺の言葉を気にしているようには見えない。 「で?走って追いかけてくるほどの用事って、何?」 「用事っていうか…お願いがあって…」 「俺に?何?」 彼女達は少し顔を赤らめながらお互いに目配せをすると、 「せーのっ…」の掛け声と共に、元々用意していたらしいセリフを声を揃えて口にした。
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