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「ね、誰かシャッター押してくれない?」
3年生の女子生徒の1人が、実行委員達に1歩近づいて言った。
「いいですよ。」
青山が前に出て、差し出されたデジカメを片手で受け取ると、もう片方の手をあけるために、持っていたカバンを佐伯の方に突き出した。
「ごめん。これ、持ってて。」
「うん。」
佐伯が躊躇うことなく、青山のカバンに手を伸ばした。
「サンキュ。」
「……」
その一連の動作がすごく自然に行われたことに対して、なぜか自分が面白く感じてないことに気づく。
……ガキか、俺は。
何でこんな事くらいで、嫉妬してるんだよ……。
心の中で自分を戒めながら俺は、3人が並んだ後ろに立った。
デジカメの液晶画面を見ていた青山が、鋭く指摘してくる。
「滝沢先生、表情堅いですよ?それじゃあ、機嫌悪そうに見えますって。」
「あー、悪い…」
「取り敢えず、そのノートパソコン、誰かに渡して下さい。」
「…そうだな…」
俺は、青山のカバンを抱きかかえるように持って立っている佐伯に、声をかけた。
「佐伯、悪いけど持っててくれる?」
「えっ…あ、はい…」
ノートパソコンを佐伯に手渡しながら、俺は心の中で自分で自分に呆れていた。
……こんな、青山に対抗するような事するなんて、
思いっきりガキだな、俺……。
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