体育祭

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「なーんか、お前ら、いい雰囲気じゃない?」 「いつの間に、そういう事になってんの?」 「…え…違っ…」 「ばか、そんなんじゃないよ。」 佐伯と青山は、言い合わせたように揃って、赤くなりながら否定している。 「……」 これ以上ここにいると、思いっきり不機嫌な顔をしてしまいそうだと思った俺は、 「で?お前ら何か、俺に用事だったんじゃないの?」 平静を装いながら、佐伯が持ってくれていたノートパソコンに手を伸ばした。 「佐伯、これ、ありがとう。」 「いえ…」 その時、初めて佐伯が顔をあげて、俺と目線を合わせた。 ―――じとっ、と責めるような目。ほんの少し尖った唇。 予想外に、まるで拗ねているような表情を見せられ、ドキリとする。 「…滝沢先生、は…」 佐伯は、じとっ、とした瞳を向けながら拗ねた口調で小さく呟く。 「……モテるんですね。」 「は?」 「あんな風にいつも、くっついて写真撮ってあげてるんですか?」 「え…」 プイ、とそっぽを向いた横顔に、思わず俺は顔を緩ませる。 ……あー、そういうことか。 佐伯は俺が、3年生の女子生徒1人1人と、腕を組んで写真を撮っているところを見てたんだな。 それにしても……、 ――何だよ、その可愛い拗ね方は。 ヤキモチを妬く佐伯の様子が可愛くて、俺は佐伯の頭に手をおいてクシャクシャ、とした。
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