体育祭

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一緒に体育祭の実行委員をすることで、俺との高校生活の思い出ができるとでもいうのだろうか。 けれど佐伯は、今年の体育祭実行委員の教師の中に俺が入っていたことを、初めは知らないようだった。 佐伯が実行委員になることで生まれる俺との接点を考えてみるが、思いつかない。 進行表を眺めながら首を傾げる俺に、実行委員の生徒が不安げに尋ねる。 「あの…どっか問題ありますか?」 「いや、ざっと見た感じでは、これでいいと思うよ。」 「気づいた事があったら、言って下さい。プログラムを作る前なんで、まだ変更ききますから。」 「ん、分かった。」 「それから、先生参加の競技についてなんですけど…」 「え…」 「あ、2枚目のプリントです。」 「ああ…」 ホッチキスで止めてあるプリントを、ぴら、と捲る。 「滝沢先生には、リレーと二人三脚の2種目とも出てもらうことになると思います。」 「あー…了解。」 毎年、余興的な種目として、教師と実行委員の生徒が参加する競技が用意されている。 教師と生徒混合のチームを2チーム作って、対戦させるのだ。 けれども年配の教師の中には、出場するのを渋る人もいて、俺のような若手の部類に入る男性教師は、2種目とも強制参加となる。
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