体育祭

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* * * 部活の時間が終わり、いったん職員室へ戻ってくると、 ちょうど実行委員会を取りまとめている体育教師が、教師参加の競技のチーム分けリストと、出場種目の一覧が載ったプリントを配っているところだった。 「お、滝沢先生がAチームのリレーのアンカーなんだ。」 「ああ。」 俺がアンカーになっているのに気づいた米倉が、俺の席に寄ってくると、周りに聞こえないように小さく囁く。 「…滝沢って、こういうの、熱くなるタイプだっけ?」 「実行委員の生徒に頼まれたんだよ。断る訳にいかないだろ。」 「ふーん…俺はBチームの3番目に走るのか……あっ…」 リストを見ていた米倉が、突然声をあげた。 「何だよ、これ。何で滝沢と佐伯美和子がペアになってんの。」 「……何でって…作戦だよ、作戦。」 「作戦?何の?」 「勝つための作戦に、決まってるだろ。」 何食わぬ顔で、俺はさらっと答えた。 二人三脚の組み合わせと順番については、俺なりに勝つための作戦を立ててたつもりだ。 二人三脚は、お互いの息を合わせることが大事だ。 そのことを考慮して、元々親しくしている生徒同士は、ペアを組ませた。 強いペア2組を作って、1組は最初の順番にし、できるだけBチームとの差が広がるのを狙う。 もう1組の強いペアは、最後に持ってくる。 もしもBチームに遅れをとっても追い上げられるように、だ。 どちらかというと、おっとりした女子生徒には、リードしてくれそうな男子生徒とペアを組ませるなどの配慮もした。 俺と佐伯は、真ん中ぐらいの順番。 不自然にならないように、他にも教師と生徒のペアを作ってある。 さらっと受け流そうとするが、米倉は更に突っ込んできた。
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