体育祭

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「いーなー、滝沢。俺も佐伯の足首を縛りたかった。」 「米倉…誤解されるような言い方するなよ。」 「はは、冗談だよ。けど…なーんか、おかしいな…」 「何が?」 「学校の体育祭の、しかも余興的な競技に作戦立てるとか…ムキになりすぎだろ。 おまけに、アンカーまで引き受けたりして…。 何でそんなに、必死になってんの?」 「…別に、必死になんて…」 「もしかして…誰かにいいところ見せたいとか?」 「……」 ……まあ、それも、無きにしも非ずだけど……。 米倉の鋭い指摘に動揺しつつも、なるべく淡々とした口調で話す。 「そんなんじゃないよ。ただ…高校生活の思い出ってやつを、作ってやりたいだけ。 あいつらも色々頑張ってくれてるし、どうせなら盛り上げてやりたいじゃん。」 ――その気持ちは、嘘じゃない。 実行委員のような裏方の仕事を、みんな文句も言わずに一生懸命やってくれている。 できる限り盛り上げて、実行委員のあいつらに、楽しい高校生活の思い出を増やしてやりたい。 半分は、そういう純粋な気持ち。 残りの半分は……、 ……佐伯に俺との高校生活の思い出を作って、いつも色々我慢させてしまっているあいつの望みを叶えてやりたい、という……、 これまた、純粋な気持ち。 「ふーん…滝沢、お前、いい先生だな。」 俺の言葉を聞いて米倉は、感心したように呟いた。
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