体育祭

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* * * 教師と実行委員の生徒が参加する競技は全員参加でないため、練習は授業中にではなく放課後に、たった1回だけ行われた。 プログラムでは二人三脚が午前の部、リレーが午後の部に行われるので、練習も先に二人三脚からすることになった。 お互いの右足と左足を縛って固定し、1、2、1、2、とかけ声を掛け合いながら、歩調を合わせて進んでいく。 「…えー、手を繋いだり肩を組んだりして、どちらかが前に進んでしまったりすることのないようにすると、上手くいきますよ。 それから、声かけも大事ですからね。 しっかり声を掛け合って、リズムよく…」 実行委員を取りまとめている体育教師の言葉を聞いた俺は、左側に立つ佐伯を見下ろして言った。 「…だってさ。どうする?」 「…え…」 「手、繋ぐ?それとも肩、組む?」 「あ、あの…先生決めちゃって下さい…」 佐伯のクルンとした睫毛が、恥じらうようにパチパチと瞬いた。 「ん、分かった。それじゃあ、こうしようか。」 俺は左手で佐伯の肩を抱くと、催促するように指でトントンと叩いた。 「ほら、佐伯もやって。」 「…っ…はい…」 恥ずかしそうな表情を浮かべながら、佐伯がおずおずと俺の方に手を伸ばした。 身長差があるため、肩ではなく俺の背中に、佐伯の手がそっと触れる。
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