体育祭

39/63
前へ
/388ページ
次へ
次に、リレーの練習が行われた。 アンカーの俺と青山は、それぞれ自分のチームの1番後ろに並んで出番を待つ。 「滝沢先生。」 爽やかな笑みを浮かべて、青山が俺に話しかけてきた。 「…まさか、二人三脚で、あんなに差がつくとは思わなかったですよ。」 二人三脚では、俺の作戦が功を奏したのか、AチームがBチームに大きく差をつけて勝利したのだった。 「二人三脚ではAチームに負けたけど、リレーでは絶対にこっちが勝たせてもらいますから。」 「そっちが負けてくれないと、俺の教師としての立場がないだろ。俺がアンカーなんだから。」 「俺だって陸上部なんだから、負けたら立場ないですよ。」 「それじゃあ、お互いに負けられない立場に居るってことだ。」 「ですね。」 顔を見合わせて、お互いに笑い合う。 青山は軽くストレッチをしながら、話を続けてきた。 「…そう言えば、佐伯、嬉しそうでしたよ。」 「え」 「二人三脚で、自分のペアの相手が滝沢先生だ、て分かった時。」 「えっ」 ドキリとして、息を呑む。 ……まさか、知ってるのか?青山は。 俺と佐伯の関係を……。 ゴクリと固唾を飲んで、青山の次の言葉を待つ。 「俺、前から知ってたんです。」 「……」 「佐伯に、好きな男がいるっていうのは…」 「…青山…お前、その相手…」 「相手が誰かは知りませんよ。」 「…何だ…」 「え」 「いや…続けて。」 「あ、はい。」 予想が外れたことにホッとした俺は、青山と並んでストレッチを始めた。
/388ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5283人が本棚に入れています
本棚に追加