体育祭

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「…確かに、あいつすぐに顔に出るよな。」 「何考えてるか、すぐ分かりますよね。」 「きっと今、メチャメチャ緊張してるんだろうな。」 「自分が走るわけでもないのに、ね。 けど、そういう天然なところも可愛いですよね。いつも一生懸命なところも…」 「……」 俺は、青山の横顔をちらりと見た。 青山は、優しい眼差しで佐伯を見つめている。 「…なあ…」 なるべくさり気なく聞こえるように気をつけながら、 俺は気になっていた核心に触れた。 「……青山は……佐伯のことが好きなわけ?」 「え…」 青山は少しの間のあと、ゆっくりと考えるようにして言った。 「……好き、ていうのとは少し違うかな。恋愛感情とは別のものだと思います。」 「……」 「うーん…何て言えばいいのかな…アイドルのような、妹のような…」 「…アイドルのような、妹のような?」 「こう…可愛くて純粋で真っ白で…いつまでも汚れて欲しくないっていうか…」 「……」 ……そう言えば、確か米倉もそんな事言ってたよな。 佐伯に彼氏ができるのは、もう少し遅い方がよかったとか何とか……。 「それに、俺…そういうのは当分、いいですから…」 「どうして?」 「……」 「無理に言う必要はないけどさ。何か悩んでるなら言えよ。俺で良かったら、話くらい聞くから。」 「……ありがとうございます。悩んでるとかそんな、大したことじゃないですから……」 青山は、無理に笑顔を作ってみせる。
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