体育祭

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必死に何でもないフリをしようとする青山に、思わず俺は、ぷ、と吹き出しそうになってしまった。 ……青山、お前…佐伯のこと言えないじゃん。 全然、誤魔化せてないっつーの。可愛いヤツ。 そこで俺は、ある事に気づいてしまった。 ……あー、そうか。 こいつ、佐伯に似てるんだ。 純粋で素直で、 何にでも一生懸命で、 思ってることがすぐに顔に出るところなんかも、佐伯にそっくりだ。 ……なるほど、ね。道理で何か、ほっとけないと思ったら……。 さっきから青山と話してて感じた親しみも、 その濁りのない澄んだ瞳に、どこか見覚えがあったのも、 青山が佐伯に似ていたからだったんだ。 「…そんなこと言うなよ。」 俺は青山の肩を優しく、ポンと叩いた。 「お前なら絶対、いい恋愛ができるって。」 「ダメですよ、俺なんて。 俺…前付き合ってた彼女のこと、泣かせちゃったんです。」 「うん。」 「俺…1つの事にのめり込むと、そればっかりになっちゃうところがあるんです。 夏休みは陸上に力入れてたから、そっちに集中してて…彼女が寂しい思いをしてるなんてことにも、気づいてあげられなくて…」 「うん。」
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